この記事は、管理人が普段お世話になっている、山梨県上野原市にある農業生産法人「上野原ゆうきの輪」の副代表大神田良行さんに寄稿いただいたものです。
「栽培に挑戦して気づかされたこと・目指すところ」という副題です。
アンデス原産の植物が日本にすっかり溶け込んで食糧として定着しているものは沢山あり、ジャガイモなどは山梨県上野原市においては、飢饉を救った食物という役割を果たし、「せいだいも」と名前を付けられて現在も新たな地域おこしの役割も持つようになっています。
ヒユ科アカザ亜科「キヌア」という植物は、このジャガイモと同じくアンデス原産です。
日本ではアカザ亜科の植物を先人は山野草として食べ、成長した幹を杖などに利用していたということですが、現在は畑の雑草という位置づけであまり好まれていない植物です。
キヌアは「母なる食物」ともいわれ、食糧としてアンデスでは栽培されてきています。ジャガイモが日本にこれだけ根付いたのにも関わらず、なぜキヌアは栽培されてこなかったのでしょうか。このキヌアの栽培に挑戦して改めて気付かされることが沢山あったのでお伝えします。
栽培は簡単、何処でも作れるのか
アンデスでの栽培の様子は紹介されていますが、当たり前ですが、日本はアンデスではないということが実感されました。
栽培環境が気候からして全く違い、発芽・雑草・虫害・獣害・風雨・連作障害と解決しなくてはならないことが全般に及びます。
日本におけるキヌア栽培は、大学圃場や試験場レベルの研究情報がすべてであったということです。
(1)栽培するための種は「生物多様性条約」を念頭に置かなくてはならないですが(このことは触れないこととします)、種の発芽が非常にデリケートであり、発芽後の立ち枯れもあり、成長と共に、無数の虫達が集まりパラダイスとなってたちまち葉はレース状態になります。この虫たちは葉を食べつくすと幹に食入り、その結果、実を付け始めたキヌアは枯れてしまい、残ったものも今度は実を食べるために穂に常駐します。
(2)鳥獣害に合わないと言われていましたが、収穫間際の穂は鹿がすべて食べつくします。
(3)雑草も日本には沢山生えます、キヌアの実は非常に小さく他の草の実と一緒に収穫されると選別処理が非常に大変です。
(4)キヌアの幹は非常に折れやすく、根が浅く抜けやすい品種栽培のため、穂が大きくなると雨や風で簡単に折れたり抜けてしまいます。倒れた穂は土が入り、やはり収穫後の選別が難しいです。
(5)キヌアは連作できません、同じ圃場に種蒔しても発芽をしてくれません。
(6 )収穫後の虫対策も必要で、脱穀・選別・精白等の食べられる状態にするまでの工程はもちろん機械化されていません、全て汎用機の試用や手作業など手探りの現況です。
なぜ化学肥料・化学農薬を使わない栽培にこだわるのか
キヌアに対する登録農薬は化学農薬で1種類、BT剤で2種類と少なく、除草剤や他の殺虫殺菌剤は使えるものが無いのが現況ですが、日本でキヌアを栽培するなら、キヌアの持つ「機能性」を最大限に活用してゆくことにこだわる必要があると思っています。
そのためにも、化学肥料や化学農薬を使った栽培はありえないと思うし、そこにこだわらなければ栽培する意味がなくなってしまうとも思っていて、使わない栽培にこだわります。
キヌア栽培の何が魅力で何を目指すのか
本当は、キヌアは非常に栽培が難しく、味も日本人の米を主食とする味の感覚からは主食とはなりえないとも思っています。
しかし、キヌアの魅力は、機能性成分が他に類を持たないくらい秘めている食物であることに尽きます。
幸いにも昨年栽培したキヌアは、少しばかりですが商品として市場に出すことができ、今年は加工品作りも始まります。
しかし、私たちはキヌアを単なる換金作物として栽培を目指すことは考えていません。
キヌアを必要とする人(食べる人、働く人、「ソーシャルファーム含む」研究する人、大きくは地域振興)のために、キヌアを通した「食(食べもの)・文化や人との交流」などを目的として、キヌア栽培には魅せられるほど秘めた価値が沢山あり、挑戦するに値する作物であると思っています。
最後に、私たちと同じ思いを持てる方は私たちと一緒に歩みませんか、連絡をお待ちしております。
追記
新しいことを実現させるには、三者が必要と言われています。
- 若者
- よそ者
- バカ者(夢中になれる)
バカ者はここにいますので若者、よそ者歓迎です、バカ者なら大歓迎です。