「キヌアの成分特性とその活用法に関する研究【緒論】」に続く総括です。
総括前半
キヌアは無機質や食物繊維が多く含まれていることからアンデス地方では粉末状に挽いたものを使ってパンや菓子、粒状は主食、加工してシリアル食品として食されている。しかし、日本ではなじみが浅くあまり利用されていない。
そこでキヌアの活用法としてスポンジケーキ、パン、日本の伝統食である餅にキヌアで一部を代替した米・小麦粉加工品の特性についての検討をした。キヌアを10%代替である米・小麦粉加工品のコントロールと比べて比容積はほとんど変化がなかったが、30%代替から急激に現象し、形状も異なった。
これらの性状の原因にはグルテン形成だけでなくキヌアの大部分を占めている澱粉が関与しているのではないかと思われた。キヌア澱粉について文献を調査したところ、キヌア澱粉成分特性、加工特性についての報告はほとんど見当たらなかった。
そこで本研究では、キヌア粒からキヌア澱粉を抽出し、キヌアの澱粉の一般的性質を明らかにした。澱粉の活用法を開発するために澱粉粒の諸性質を測定し、粘性挙動は回転粘度計で測定した。また、澱粉ゲルは静的粘弾性(クリープ)と動的粘弾性によりゲルの性状を明らかにし、キヌア澱粉の独自の利用について検討した。
総括後半
本研究では、栄養価の高い雑穀キヌア全粒粉を用いての加工品が小麦加工品との形状、味から改善を模索する中で澱粉を調製し、澱粉の一般的な特性を明らかにすることでキヌア澱粉の特性を活かした加工品を検討した。
その中でキヌアは今までの澱粉にはない、温度依存性が小さく、濃度依存性が小さく、保存時間にも変化が少ない澱粉であった。
また、物性特性値である大変形下では脆性破断を示したが、他の澱粉より大きな力を加えずに壊れていく脆い澱粉であったことから、軟らかい、口の中で壊れていくゼリーを検討した。
キヌア粉の利用では特有の風味、苦味をもたらしたが、キヌア澱粉を用いたミルクゼリーでは風味、味には影響はなかった。キヌア澱粉の利用としてミルクゼリーについて検討したが、糊化過程における糊化開始温度が低いこと、濃度および温度依存性が低く、もち等のようにべたつき感が少ないことからソース、あんかけに用いることで美味しさを保てる等キヌア料理の活用法は未知数と考える。
日本の高齢社会において「いかにして健康な生活を営むか」が重要であり、その基本は食生活にあるといっても過言ではない。加齢に伴って咀嚼や嚥下などの生理機能が低下すると、栄養、味に加えて食べやすさが重要になってくる。
そこでキヌア粒および粉さらにはキヌア澱粉としての摂取は、栄養価の面、食べやすさからも好ましく、多くの食材を摂りにくい高齢者をはじめ幅広い年齢層の人たちに受け入れられる有効な食品と考えられる。
学術情報が少ないキヌアの特性を明らかにし、利用および調理法の開発を提案したことは今後の食環境に有意な知見と考える。