キヌア栽培にまつわる論文2016完全まとめ

いよいよ2016年のキヌア春蒔きシーズンが近づいてきました。

これまでの実績や感覚によって一定の展望はありますが、それだけでは心もとない状況で、科学的な検証に基づく成果を参考にすべく、日本でのキヌア栽培に関する論文をまとめようと思います。

キヌア栽培

まとめ方は、以下の構成で、記述ごとに出典リンクを挿入するスタイルです。また文献によってはキヌアのことをキノアと記述するケースもありますが、原文ままとしています。また、収穫以降のことは今回は割愛します。

  1. 品種
  2. 土壌
  3. 肥料
  4. 播種
  5. 管理

品種

Valleyタイプのキノアをわが国で栽培する際、日長が15 時間近くになる夏場に開花・成熟期を迎えるように栽培すると、多くの子実収量を得ることができないと考えられる。また、Sea levelタイプのキノアで多くの子実収量を得るには、温暖な気候条件の地域で栽培するか、開花・成熟期が温暖な条件になるように栽培するとよいと考えられる(参考:氏家和広2008「栽培の基本技術」)。

品種については「意外と知られていないキヌアの様々な品種たち」もご覧ください。

土壌

キノアは地下水位の上昇による収量の低下が著しく、高地下水位による子実収量の低下を防ぐにはダイズより低い地下水位を保つことが必要である。土壌の透水性の改善に努めることが重要であり、とくに保水性が高い粘土質土壌で栽培する際にはきわめて必要(参考:氏家和広2008「栽培の基本技術」)。

最適土壌水分については黒ボク土が30%(水/乾土重g)、灰色低地土が10〜25%(水/乾土重g)程度であると考えられた(参考:石井利幸2005「国内におけるキノア栽培技術に関する研究 : 第1報 キノアの出芽に与える播種深度と土壌水分の影響」)。

キノアはいずれの系統も地下水位が高まるにつれて出芽率が低下した(参考:磯辺勝孝2004「P-34 地下水位の違いがアマランスおよびキノアの生育・収量に及ぼす影響」)。

肥料

ほとんど肥料を施用しなくても、ある程度の収量は得られる。‘NL-6’などの多くの品種では、窒素、リン酸、カリウムをそれぞれ 5g/㎡程度、播種前に全層施肥することで増収が見込める。ただし、施肥量が増加すると草丈が高くなり、倒伏の危険性が増加するため、肥料過多には十分注意すべきである(参考:氏家和広2008「栽培の基本技術」)。

雑穀類の栽培で通常用いられる程度の窒素施用量(約3〜4kg/10a)が最適であろうと考えられる(参考:冨永達1997「 キノアの生育と収量に及ぼす窒素施用の影響」)。

窒素基肥施用量は、8kg/10a 程度が適していた(参考:石井利幸2010「山梨県におけるキノア生産に向けた取り組み」)。

数値にばらつきがありますが、他の作物とそう大きな違いはなく、過剰な施肥にさえ気をつければ良いと思います。

播種

品種タイプごとに関東地方でのキノアの播種適期を考えると、Sea level タイプの品種は3〜4月頃、ValleyタイプやAltiplanoタイプの品種は7月頃になる。Sea levelタイプの主茎型品種‘NL-6’の場合、200個体/㎡程度の栽植密度で多収となる(参考:氏家和広2008「栽培の基本技術」)。

最適な栽植密度は1㎡当たり50個体から100個体であると考えられた(参考:磯辺勝孝2015「光エネルギー利用効率と物質生産および子実収量からみたキノア品種「NL-6」の最適栽植密度の検討」)。

高い出芽率を得るためには播種深度は1.0cm程にすると良いことが明らかにされた(参考:磯辺勝孝2015「土壌水分,地温および播種深度がキノアの出芽に及ぼす影響」)。

春播きと夏播きが可能で、春播きは多収となるが、虫害のリスクが高かった。夏播きは、 春播きよりやや少収となるものの、草丈が低く、 耐倒伏性が高まり、子実品質は優れた。播種時の覆土は、0.5〜1.0cm とし、適度な水分状態の時に播種する(参考:石井利幸2010「山梨県におけるキノア生産に向けた取り組み」)。

栽植密度は、30株/m²〜180株/m²で検討した結果、栽植密度の違いが子実収量に及ぼす影響は小さく、いずれの栽植密度でも200kg/10a程度だった(参考:石井利幸2010「山梨県におけるキノア生産に向けた取り組み」)。

管理

キノア栽培期間中は、カメノコハムシなどの害虫が発生し、葉を食害する。多発生する地域では、 発生が比較的少ない夏以降に播種をするなどの対策が必要である(参考:石井利幸2010「山梨県におけるキノア生産に向けた取り組み」)。

以上です。

キヌア栽培収穫

他の知見とも合わせると以下のようなことが、日本におけるキヌア栽培については言えそうです。「品種と季節を考慮して、水はけの良い土地で、施肥は多すぎず、発芽時には十分な水を与え、発芽以降は水を控える」。昨年に実験したキヌアは湿害で根腐れを起こしていた可能性があり、呼吸に必要な酸素を十分に供給できるよう、団粒構造になった土壌を形成しようとも思っています。また害虫対策としては、有機栽培の場合に食酢を検討しようとも思っています。

やり方の決まっていないキヌア栽培について、一緒にトライ&エラーをしましょう。「キヌアの森」では栽培に関する情報交換ができます。気軽にご参加ください。