貴重な一歩!国産キヌア栽培へ挑んだ山梨の軌跡

山梨は国産キヌア生産にむけて日本では初めて本格的に挑戦した県です。今ではもう公式には活動を停止してしまったという情報も入っていますが、改めてその軌跡に触れてみたいと思います。

2003年度から始まったこの取り組み、2007年には私もかすかに参加しておりました。この記事は、日本特産農作物種苗協会発行の「山梨県におけるキノア生産に向けた取り組み」という論文をメインに構成しつつ、当時の私の活動についても触れていきます。

キヌア畑とネコ

国産キヌア生産に向けて

山梨県で国産キヌア生産を先導していたのは山梨県総合農業技術センター栽培部作物特作科の石井利幸さんです。2007年当時私はコンタクトをとって教えを請うたりしていました。奇遇にも我が家の先祖が残してくれていた農地(実態は耕作放棄地)を有効活用するという目的もありました。

石井さんがキヌア生産に着目した経緯は以下の通りです。

<生産現場からは、省力栽培が可能で、所得向上が見込める新しい品目の導入が求められていた。そこで、当センターでは、アワ、キビなどの一般雑穀より販売単価が高く、他地域との差別化が図れる新規農作物として、南米アンデス地方原産の擬穀類キノアに着目した。

原産の南米高地は、冷涼で雨がほとんど降らない地域である。山梨県中間・高冷地は、前記したように日照時間が長く、冷涼で雨も少ないなど、キノア原産地の気象条件に類似しているため、キノアの栽培が可能ではないかと考えられた。

また、キノアは近年の雑穀ブームに乗って、徐々に認知度が高まりつつある品目であるが、 現在までに国内での栽培事例はほとんどなく、産地化したところはない。そのため、栽培が可能となれば、山梨県の特産品になりうると考えられた。>

現地ボリビアの環境条件と山梨のそれが似ているというのは面白いですね。山梨は全国でも有数の多照地域とのことですから、太陽の照りつけるウユニ塩湖周辺の状況と類似しているのではという観点でしょう。先駆的な取り組みに着目された石井さんたち、キヌア栽培を始めてどのような結果になったのでしょうか。写真は私が取り組んだ畑の様子です。

キヌア畑

キヌア栽培の主な研究結果

同論文では以下のように記載されています。

  • 優良品種・系統の選抜を行い、草丈が短く、耐倒伏性に優れ、子実収量が安定したNL-6(Sea-level type)を有望品種として選定した
  • 播種は、春播きと夏播きが可能で、春播きは多収となるが、虫害のリスクが高かった。夏播きは、春播きよりやや少収となるものの、草丈が低く、耐倒伏性が高まり、子実品質は優れた。播種時の覆土は、0.5~1.0cmとし、適度な水分状態の時に播種する
  • 栽植密度は、30株/m²〜180株/m²で検討した結果、栽植密度の違いが子実収量に及ぼす影響は小さく、いずれの栽植密度でも200kg/10a程度だった
  • 窒素基肥施用量は、8kg/10a程度が適していた
  • キノア栽培期間中は、カメノコハムシなどの害虫が発生し、葉を食害する。多発生する地域では、発生が比較的少ない夏以降に播種をするなどの対策が必要である
  • 収穫後は、乾燥、脱穀、選粒を行う。選粒には、一般穀類などの選別に用いられる比重選別機が有効である
  • また、県産キノア子実に、数種のポリフェノール類の存在が確認され、総フェノール量は、ソバには劣るものの、一般の穀類よりも多い

かなり詳しく結果を残してくださっています。後続の研究者、農家の方もこれらをさらに発展させて国産キヌア生産を確立させていってほしいです。理想的な完全食品として、一時のブームではなくて世界各地で生産される食品になることを目指して。

私の栽培チャレンジはというと、管理不足が原因で全く日の目を見ませんでした。写真のように30cmほどまで成長したのですがそれ以降は荒れ果ててしまったようです。ちなみにこの畑は丘陵にあり、強風による倒伏の危険性もありました。環境によりますが、キヌアは成長すると80cmほどになります。

キヌア畑成長

現在の山梨とキヌア

現在は「上野原ゆうきの輪合同会社」という農業法人でキヌア栽培が試されており、公式ページでは写真ともともに時々その様子が公開されています。今後の動静に注目していきたいところです。

今後の国産キヌア

とはいえ簡単ではないです、国産キヌア。生産のための各種課題は山積みで、市場性をもたせるための安定収量確保や機械化、流通のことなど、一筋縄ではいきそうにありません。石井さんは以下のように述べています。

<地域特産農作物として定着を図るためには、栽培技術と利用・販売方法の検討が必要である。栽培技術については、これまでの成果により一応の技術は確立されたが、今後は生産の拡大にともなう機械化体系の確立や収穫後の子実調整技術の確立が課題となる。>

他にも京都の桂高校での取り組みは続いており、次の時代を担う高付加価値農作物としての期待が消え去ることはありません。

参考:山梨県におけるキノア生産に向けた取り組み(PDF)

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