2013年の国際キヌア年、2014年の日本キヌア元年、2015年のキヌア盛り上がり年を経て、2016年はキヌアにとってどんな年になるでしょうか。
相変わらず”スーパーフード”という言葉は話題性を持ち続けているようで、チアシードやスピルリナ、はたまたテフなどにまでその範囲を広げて注目を集めています。
この写真は山梨県上野原市の畑で、右手前の赤いものがアマランサス、左奥の緑色のものがキヌア、という珍しい構図です。
今回は、めざましテレビや、オリコンなどの各種Webメディアが2016年の注目すべきスーパーフードとして採り上げている”アマランサス”とキヌアの違いについて紹介します。
学問的な分類は
キヌアはヒユ科アカザ亜科アカザ属、アマランサスはヒユ科ヒユ属です。ヒユの日本語訳はAmaranthaceaeで、アマランサスとはヒユ科の栽培植物の総称であるそうです。また、
60の属の中に800の種があり、その内、観賞用、野菜用、穀実用などで約10種類が栽培されている。穀実用としては、センニンコク(仙人穀)、ヒモゲイトウ(紐鶏頭)、スギヒモゲイトウの3種がある。
ことも知っておきたいポイントです。雑穀文化のあった地域の高齢の方ならば、仙人穀と言ったほうが早いケースがあるかもしれませんね。
キヌアも同様に多様な品種があり、その総数は数千とも言われます。栽培実績があり、特に日本で入手できるものは相当限られてきます。
粒の栄養価は
「キヌアの栄養成分をその仲間たちと比べてみた」にある通り、アマランサスは各種栄養素についてキヌアのそれを上回っています。
ただしアマランサスは、キヌアよりも粒がさらに小さくて利用方法に工夫がいるため、食用としての総合評価は利用シーンによって変わります。
葉っぱも食べられる
キヌアは葉っぱも食べられます。ペルー・ボリビアなどの生産現地では食用とされています。栄養価が粒よりも高いという情報があるほか、各種機能性があることも報告されています。
アマランサスも同様です。沖縄や東北で葉っぱの栽培や研究がなされています。アマランサスの葉は、
鉄分やカルシウム、ビタミンCなどの栄養分が、ほうれん草や小松菜などよりも多く含まれています。【株式会社読谷】
キヌアの葉は、
キヌアの葉にはホウレン草やクレソン以上の栄養価があり、ボリビアやエクアドルではすでに野菜として食べられている。
どちらも、粒だけでなく葉まで有用だというのはあまり知られていないですが重要なことです。
歩んできた歴史
キヌアもアマランサスも、南米の古代インカ文明で食用栽培されていましたが、西洋人の襲来で栽培が禁止されて、栄養価の高さから近年になって再発見された流れは同様です。
スペイン人によって宗教色が強く危険視されたために栽培が禁止されたアマランサスは、19世紀に入るとアジア、インドに伝わり、インド北部山岳地帯・ネパールなどで栽培されるようになったそうです。日本には江戸時代に観賞用として導入され、東北地方では小規模ながらアカアワなどの名前で食用にも栽培されました。
観賞用として
生花用などとして、長野県産アマランサスの花が出荷されたことがあるそうです。キヌアは、チェコでは観賞用として栽培されてきた長い歴史があります。
アマランサスは、その植物体を染料として使うこともできるようです。キヌアも、成熟に向かって色合いが濃くカラフルになりますので、同様の可能性はあります。
どっちが人気
人気度合いを知ったり比較したりするのに便利なのがGoogleトレンドです。キヌアとアマランサスのGoogle検索ボリュームについて、2004年から経年で比べてみました。
今年に入ってからのアマランサスの追い上げがすさまじいですね。アマランサスは過去に何度も高栄養食材として紹介され、また東北を中心として国産品もあるものですが、ここに来て再認識されたようです。
ただ、常に新しいものを追い続けないといけないのが話題、そしてメディアの性となっていますので、話題になっているという理由だけでなく、それがどういうものなのかを本質的に捉えられるようにはなりたいものです。
どうやって食べるの
キヌアは「食す」にある通り、本当に様々な食べ方があります。キヌアだけのレシピ本やモデルのローラの「Rola’s Kitchen」が出版されるくらい、キヌアの使い勝手は多彩だと言えます。
一方のアマランサスも使いみちは多様ですが、クックパッドのレシピ数で比べると、現時点でキヌアが847品であるのに対してアマランサスは160品と、その粒の大きさなどから来る使い勝手の違いが現れているように見えます。
どちらも、ポン菓子のように弾けさせたり、粉に挽いたり、茹でたり煎ったりなど、いろいろな使い方ができます。
育て方に違いはあるか
国産に絞って言うと、同じような種類の植物ですから大きな違いは無いように考えます。キヌアは「育む|キヌアまとめ」が、アマランサスは「アマランサス栽培|みんなの農業広場」が詳しいです。
以上です
植物そのものも、育て方も、食べ方も非常に似ていますね。最も顕著な違いは粒の大きさで、アマランサスはほとんどゴマをイメージすれば良いです。
キヌアは、レアル種などの優良種ではゴマより大きく、直径4mmほどにはなります。私としては、粒として料理に使い勝手がいいのは大きいキヌアだと思っています。粉にするなど加工すれば栄養価やその他機能性の比較になってきますが、大きな差は無いようです。
豊かな食生活は多様な食材からです。キヌアにせよアマランサスにせよ、ひとつの食材に偏ることなく、多様性に溢れるバランスの良いスタイルを心がけたいものですね。
参考
- アマランサスの歴史:雑穀―11種の栽培・加工・利用 (新特産シリーズ)
- 画像:Bioversity International